Walking DialogueVol.2

骨董と経済、インターネットと路上

インターネットと路上

東寺近辺のカフェ

東寺の近所のカフェに入る

当時、赤瀬川原平たちは路上という場所に着眼したけど、今インターネットがあるわけじゃん。2020年を生きる僕たちにとって、インターネットって限りなく日常の風景で、一番身近なものですよね。インターネットを「現代の路上」と捉えて活動している陽光くんは、ネットをどういうふうに見ている?

「インターネットの骨董」を見つけたいですよね。古(ふる)インターネット屋さんをやりたいんですよ。好きなアーティストなんかが亡くなった時にブログに書く追悼文みたいなのが好きで。例えば忌野清志郎が亡くなった時、清志郎のことを好きだった人が清志郎についての思いを書いた記事とかね。今はTwitterでR.I.P.(「Requiescat in Pace=安らかに眠れ」の意)とつぶやいて済ませる人も多いけど、ブログだと「あの時の日比谷野音に行きました」というふうに、エピソードや思いまで長文で書いたりするから、「普段この人の口から、このミュージシャンのことを好きとか聞いたことなかったけど、すげぇ好きじゃん」ということがわかったり、たくさんのブログを読むことで「この人とこの人は同じ日のライブに行ってた」ということがわかったり。1冊の本くらいの読み応えがあった。

今でも、10年くらい前に書かれたブログを読み返すんですよ。最近って今日のことばっかりだから。「2011年にこのブロガーが書いたこの記事がいい」とか、そういうのがまとまってるとおもしろいかもしれない。

一人ひとりの中に何度も読み返したい記事はあるかもしれないけど、それをまとめて見る機会はないね。

都市の楽しみ方ってたくさんあると思うんです。路上観察学会以外にも、人類学者や民俗学者が、これまでに様々な見方を提示している。「目を凝らそ」では、現代にしかあり得ないような見方を模索していければと思っています。

新しい観光ってことですよね。

そうですね。観光の仕方自体を提案したい。

インターネットと路上でいうと、食べログがすごい好きで。アプリ入れてます?

入れてる。どこかに行って、ごはんを食べようかなという時、食べログはまず見る。

有料会員ですか?

そうです。

いい店だと、いいレビュー書いてる人がいたりして。

レビューまでは読んでないなー。

レヴュアーがいいんですよね。このジュリアス・スージーというレヴュアーのレビューが一番やばい。この人は店を書くんじゃなく、人を書くんだよね。あの人が引退しちゃう」とか。

陽光くんが前に「まるで小説のように書かれたレヴューを読んでから、実際その店に行くと全く体験が違う」って言ってたね。映画を観た後にする聖地巡りみたいな感じだね。

それと違う点は「存在しない感」があるということだね。幽霊感があるというか。あとこの人もすごい。ss_tapeさん。名前が気になって検索エンジンで検索したら、ヤフオクのアカウントも出てきた。ヤフオクではNUMBER GIRLや小杉武久のCDとかを売っていて、それなら味も信用できるなって(笑)。

陽光くんの、こういう食べログの楽しみ方も、独特だと思うんだよね。僕は点数と外観・内観・料理の写真は見るけど、レビューまで読んだことない。楽しみ方を見つける天才だね。楽しみ方は自分で開発しているの?

そうですね。基本はネットストーカーなんで。「この人どういう文章書くんだろう」とか「この人の違う面を見てみたいな」とか。たぶん執着心がすごいんだと思う。多分みんな日頃から色々なものを見つけてはいるんだけど、そんなに執着していないだけ。

赤瀬川原平が「四谷の純粋階段」(※9)を見つけた時には、1回見た時に「なんだろう」と思って、その時は何が気になるのか自分でも理解できなかったらしい。でも、「なんだろう」が抑えきれず、写真に撮ったらしい(※10)。普通は変なものを見ても「まあ変だね」で終わるところを着眼するのが上手な人って何回も「変だねえ」を自分の中で反復させる力を持ってるんだなと改めて感じたな。そうやって、新しい視点って生まれていくんだね。

※9 四谷の純粋階段
東京の四谷本塩町の祥平館という旅館の裏にあった階段。階段を昇った先の入口が埋められてしまったため、昇ってもどこへも行けず降りるだけしかできない無用の物となっていた。これを発見した赤瀬川らは「純粋に昇り降りするだけの階段」、「本当の階段そのものだけの絶対純粋階段」と考え、そのことから四谷階段、純粋階段と呼ぶようになった。(赤瀬川原平『超芸術トマソン』白夜書房(1985年)、筑摩書房(ちくま文庫)1987年)

 

※10 赤瀬川原平インタビュー[横浜市民ギャラリーあざみ野]
https://youtu.be/80hNQKGL3t0

プロフィール

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山下陽光|YAMASHITA Hikaru
「途中でやめる」主宰

ハンドメイドファッションブランド「途中でやめる」主宰。1977年長崎県生まれ。18歳で上京、18年間東京で過ごし、2013年に長崎県大村市に転居、2017年より福岡市在住。「バイトやめる学校」を日本全国各地で開催。全部タダのお店「0円ショップ」を企画。最先端の過去をガン見する「新しい骨董」のメンバー。妻が京都市出身ということもあり、ここ数年来京の機会が多い。

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山城大督|YAMASHIRO Daisuke
アーティスト

美術家・映像作家。映像の時間概念を空間やプロジェクトへ応用し、その場でしか体験できない《時間》を作品として展開する。2006年よりアーティスト・コレクティブ「NadegataInstant Party」を結成し、「あいちトリエンナーレ2013」「瀬戸内国際芸術祭2016」など全国各地で作品を発表。第23回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品受賞。学生時代は、四条烏丸から北白川まで自転車で鴨川を疾走して通学をしていた。2020年4月より京都市内在住。

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完