Diogenes with a CameraVol.2

対話篇

作家

田村友一郎(アーティスト)
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日時

2020年5月

場所

第一旭本店と新福菜館本店
(京都市下京区東塩小路)
映像作家・アーティストなどがそれぞれの視点・方法で、2020年4月以降の路上を記録する企画「Diogenes with a Camera」(企画名は1952年にMoMAで連続開催された写真展の名称から引用)。第2回は、アーティストの田村友一郎さんに、「今は、歩きながらの対話(Walking Dialogue)ができないのですが、なんとか対話だけでも可能でしょうか?」とMessengerで送ってみました。閑散とした昼下がり、京都の知る人ぞ知るスポットを拠り所に、記録はどんどん哲学的な次元へと向かうことに。

対話篇

京都市下京区東塩小路

D

静かですよね。

S

そうやな、静かや。

暇してはるんですか?

暇ではない。

忙しくしてはるんですか?

忙しい、いつもより。

いつもより?

そうや。

いつものほうが、よっぽど忙しくしてはるんとちゃうんですか?

いや、いつもより忙しいんや。おまえは暇なんか?

前よりは暇なんですけど、見てわかりません?

見てもさっぱりわからん。忙しさというもんは目に見えるもんなんか?

見ればわかるんとちゃいますかねえ。あなたも忙しくしてはるようには見えないんですが。

私の忙しさがおまえは見えへんのか? 事実、いま私は忙しい。

なんで忙しくしてはるんですか?

いろいろと考えることがありすぎるんや。

なにについて考えてはるんですか?

いろいろや。

例えば?

行く末について

行く末? ていうと?

未来ともいうな。

どんな未来について考えてはるんですか?

例えば、存続についてや。

店の存続についてですか?

いや、それにとどまらん。自己、家族、帰属する地域、国家、そしてこの世界のことや。

壮大ですね。

切実なことや。

てっきり店のことやと思ってました。

すべてはつながっていることや。

こんな機会なんで聞いてもいいですか?

遠慮はいらへん。

感性についてなんですけど。

ほう。

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