Walking DialogueVol.3

民俗学者と歩く瓜生山

案内人

菊地暁(民俗学者)
山城大督(アーティスト)
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歩いた日時

2019年11月27日(水)
14:30~17:30あたり

ルート

瓜生山
研究者やアーティストなど、独自の視点を持つゲストを招いて街歩きをしながら対話し、京都の路上でまだ見ぬ刺激的なものを見つける対談企画「Walking Dialogue」。第3回では、民俗学者であり、京都大学人文科学研究所助教の菊地暁さんをゲストに迎え、京都市左京区北白川にある標高301mの瓜生山を訪れました。瓜生山に築かれた山城 北白川城跡、江戸時代の仙人 白幽子が修業した場所、石切り場跡など、山中に「跡」を探しながら多角的に一つの山を読み解く内容となっています。
編集:中本真生
編集協力:植田憲司・森田直子
撮影:津久井珠美

昔ながらの尾根道を歩く

A. 京都一周トレイル 東山コース 55
B. 大山祇神社

菊地

今日は瓜生山に登り、北白川城跡まで行きたいと思っています。というわけで、これから京都一周トレイルの東山コースに挑みます。

山城

京都一周トレイル?

東山、北山、西山などの山道を歩ける山歩き好きに大人気のコースです。これから行く道はその一部になってます。ハイカーとすれ違うかもしれません。

少し歩いて瓜生山の登山道の入口に差し掛かる

「何かが始まるぞ」っていう雰囲気が漂ってきましたね。

そうそう。

これいいですねー。「トレイルコース」と書いてる。

会話しながら山道を歩く

瓜生山は室町末期の戦国時代には北白川城というお城だったんです。お城といっても近世城郭みたいに天守閣がある訳ではなくて、何かあった時に逃げ込んで陣を作るくらいのものでした。現在は造成の跡が残っているくらいで、建物としては何も残っていません。これから歩く道はそこに行くルートの一つですが、山の尾根に道があるんですね。現代の道はある程度の幅を取らなきゃ自動車が通れないので谷筋を通るのが基本ですけど、前近代の主に人間が足で歩く時代においては、尾根を歩いた方が見晴らしもいいし、谷筋に比べれば圧倒的に歩きやすい。そういう昔ながらの尾根道を歩くにはいいコースだと思います。

民俗学者の仕事

B. 大山祇神社
C. 瓜生山 麓

民俗学者のお仕事について少しご説明いただけますか。

色んなところに行って色んなものを見て、その土地で暮らしてる人の話を聞いて、それをまとめていくという仕事です。歴史学と民俗学の違いの話をしても専門外の方にはなかなか伝わらないので、調査する時には現地の方に「日本の歴史を調べていて、ちょっと昔の話を聞きに来ました」と説明することが多いです。

民俗学の中でもご専門は?

博士論文を書いたのは石川県の能登半島です。ユネスコの無形文化遺産にも登録されました「奥能登のアエノコト」という豊作祈願・収穫感謝の儀礼について調べました。それからはご縁があればどこにでも行っています。昨年は中国雲南の国境地帯に行きました。

山道を20分ほど歩くと開けた場所に出る。

あ、ひらけた。

真ん中くらいまでは来ました。その辺の木の隙間からちょこちょこと町が見えるけれど、京都造形芸術大学(現京都芸術大学)(以下、造形大)から実はそんなに遠くに来ていないことがわかると思います。ここらから一乗寺や松ヶ崎とかが見えてるんじゃないかな。

ちょっとこの倒木に座りましょうか。

そうですね。

そのまま転がっていかなければいいけど。

(笑)。

一同倒木に腰掛けて、マップアプリで現在地を確認する

ぐるっと造形大の裏山に回って登ってきた感じですね。

全然遠くには来ていない。

菊地さんが地図を取り出す

この地図は何ですか?

京都一週トレイルの地図です。東山コースや西山コースや北山コースとかのそれぞれの地図があります。今いるのがこの56の3というところです。

この地図おもしろいですね。

おもしろいですよ。500円で買えます。京都大学のすぐ近くに関西地図センターっていう地図専門店があるんですけど、そこで国土地理院地図から、かなりマニアックな地図まで買えます。

地図っておもしろいですよね。

大学院で進学した先が地理学の先生と民俗学の先生が一緒にいるようなところだったんです。みんな地図を一生懸命見たり写したりしていたのですが、当時は「何が楽しいんだろう」と思っていました。地図をちゃんと見れるようになって、色々な土地を歩くようになってから、地図がとてつもなく大事なことを気がつきました。山頂は少し先なのでもうちょっと頑張りましょうか。